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2026-03-09電力の基礎知識

GX-ETS(排出量取引制度)が始まると電気代は上がる?――仕組みと影響をわかりやすく解説

基礎知識GX-ETSカーボンプライシング制度時事

2026年4月から「GX-ETS」という新しい制度が始まる。ニュースで見かけるけど、**うちの電気代に関係あるの?**というのが正直なところだと思います。結論から言うと、今すぐ上がるわけではないが、2028年以降じわじわ効いてくる設計です。


そもそもGX-ETSって何?

ひとことで言うと、「CO2を出すほどお金がかかる」仕組みを作って、企業に排出削減を促す制度

ゴミ袋で考えるとわかりやすい

自治体の有料ゴミ袋を思い浮かべてください。

  • ゴミを出すほど袋代がかかる → 自然とゴミを減らそうとする
  • GX-ETSはこれの「CO2版」。CO2を出すほどコストがかかる仕組み

もう少し詳しく

  1. 政府が大企業に「年間これだけCO2を出していいよ」という**枠(チケット)**を配る
  2. チケットが余った企業は、余り分を売れる(省エネを頑張った企業は得をする)
  3. チケットが足りない企業は、買い足さなければならない(たくさん排出する企業はコスト増)
  4. つまり、CO2を出すほどお金がかかる → 削減したほうが得になる

EUでは2005年からこの仕組み(EU-ETS)が動いていて、日本は2026年に本格導入。


電気代はいつ、どう影響を受ける?

GX-ETSは一気に始まるのではなく、3段階で少しずつ厳しくなる設計。

第1段階(2026年4月〜):家計への影響はまだなし

  • 年間CO2排出10万トン以上の大企業(約300〜400社)が対象
  • ただしチケット(排出枠)はタダで配布。追加コストは発生しない
  • 電気代への影響はほぼなし

第2段階(2028年度〜):電気代がじわじわ上がり始める

  • ENEOSや出光のような石油・ガスの輸入会社が、輸入する燃料のCO2排出量に応じて国にお金を払う(=賦課金)
  • つまりガソリンや天然ガスの仕入れ値が上がる
  • 発電所は天然ガスや石炭で電気を作っているので、燃料代が上がれば発電コストも上がる
  • → その分が電気代にじわじわ上乗せされる

第3段階(2033年度〜):電気代への影響が本格化

  • 東京電力や関西電力のような発電会社が、第1段階ではタダだったチケット(排出枠)をオークションでお金を払って買うことになる
  • 発電部門は日本のCO2排出の約4割を占めるので、購入額が大きい
  • → そのコストが電気料金に上乗せされ、家庭の電気代に本格的に響いてくる

まとめると

時期何が起きる電気代への影響
2026年4月制度スタート(チケットはタダ)家計への影響なし
2028年度燃料に賦課金がかかるじわじわ上がり始める
2033年度発電会社がチケットを買う本格的に影響

「月何円上がるのか」はまだ未確定ですが、ざっくり試算してみます。日本の電力のCO2排出量は1kWhあたり約0.45kg。月350kWh使う家庭なら、炭素価格ごとの上昇額はこうなります。

炭素価格(CO2 1トンあたり)月の電気代上昇上昇率の目安
5,000円(日本の初期水準の想定)約+800円約6%
10,000円約+1,600円約12%
16,000円(EU並み)約+2,500円約19%

先行するEUでは排出権が1トンあたり50〜100ユーロ(約8,000〜16,000円)に達しています。日本がいきなりこの水準になることはないが、2033年のオークション導入後に段階的に近づいていく可能性はある。そもそも日本の電気代がEUや他国と比べてどういう水準にあるかは、日本の電気料金を世界と比べてみた記事に整理しています。

炭素価格別 月の電気代上昇額(月350kWh使用の場合)

※コスト全額が転嫁されるとは限らず、脱炭素が進めばCO2排出量自体が減るため、実際の上昇幅はこれより小さくなる可能性もあります。


再エネ賦課金とどう違う?

電気代に上乗せされる制度として「再エネ賦課金」がすでにありますが、目的が違います。

再エネ賦課金GX-ETS
目的再エネの普及を支援するCO2排出を減らす
誰が負担?全消費者(電気代に一律上乗せ)排出企業(コストが電気代に転嫁される)
今後の見通し2030年代に下がり始める見込み2028年以降、段階的に拡大

ポイントは入れ替わりのタイミング。再エネ賦課金が下がり始める頃に、GX-ETSのコスト転嫁が始まる。「片方が減って片方が増える」構図です。再エネ賦課金がなぜ2032年を境に下がり始めるのかは、再エネ賦課金の仕組みと転換点の記事で詳しく解説しています。


そもそもなぜこんな制度が必要なの?

1. 脱炭素は国際的な約束

日本は「2050年に温室効果ガス実質ゼロ」「2040年までに73%削減」を宣言している。「CO2を出すとお金がかかる」仕組みがないと、企業は今のまま出し続けてしまう。

2. 何もしないほうがもっとお金がかかる

気候変動が進むと、災害の増加・食料価格の高騰・保険料の上昇――対策しない場合の社会コストは、カーボンプライシングのコストを大きく上回るとされている。

3. 海外との貿易で不利になる

EUはすでに「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」という制度で、CO2対策が不十分な国からの輸入品に追加の関税をかけている。日本に排出量取引制度がないと、日本企業の輸出品が不利になる。


この制度、予定通り進むとは限らない

GX-ETSは「CO2にお金をかける」仕組みだが、世界的にはこうした制度への逆風も起きている。

  • アメリカ: トランプ政権がパリ協定から再離脱。連邦レベルでの排出規制を後退させる動き
  • EU: 排出量取引のコスト増に対し、産業界から「国際競争力が落ちる」と反発が強まっている
  • 日本: もともと産業界への配慮が強く、第1段階でチケットをタダで配っているのもその表れ

つまり、2028年・2033年の予定が延期・縮小される可能性はある。逆に、気候変動の被害が深刻化すれば前倒しもありうる。

消費者としては「予定通りに進んだ場合の最大シナリオ」と「後退した場合」の両方を頭に入れておくのが現実的。いずれにせよ省エネの価値は変わらない。


消費者として何ができる?

2026年時点では焦る必要はないが、中長期的に意識しておきたいことが2つ。

火力に頼る電力会社ほど値上がりしやすい

GX-ETSのコストはCO2を多く出す火力発電ほど大きい。再エネ比率の高いプランや原子力を活用した電力会社は、相対的にコスト上昇の影響を受けにくい。電力会社を選ぶときの判断材料になる。

省エネが一番確実

電気の使用量そのものを減らせば、賦課金もGX-ETSの転嫁コストも影響が小さくなる。どんな制度が来ても、省エネは裏切らない。


まとめ

ポイント内容
GX-ETSとは「CO2を出すほどお金がかかる」仕組み
開始時期2026年4月(ただし最初は電気代への影響なし)
電気代への影響2028年の燃料賦課金、2033年の有償オークションで段階的に
再エネ賦課金との関係再エネ賦課金が下がる頃に、GX-ETSのコストが上がる
消費者にできること省エネ+再エネ比率の高い電力会社を検討

電気代への影響が本格化するのは2028年以降。今から仕組みを知っておけば、将来の電力会社選びや省エネの計画に活かせます。


この記事は2026年3月時点の情報に基づいています。制度の詳細設計は今後変更される可能性があります。最新情報は経済産業省GXリーグの公式サイトでご確認ください。

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