2026-04-30 ・ 太陽光・蓄電池
保険会社が嫌いなリスクが、一番大きいリスクだ
保険会社は、引き受けられないリスクがある。
火災保険は売れる。自動車保険も売れる。どちらも「確率は計算できるが、発生するかどうかは分からない」リスクだ。大数の法則が働く。多くの契約者から保険料を集めれば、統計的に安定した収益が見込める。
ところが、確率が計算できないリスクは売れない。原発事故の損害保険は存在しない。巨大地震の損害保険は、民間では引き受けられず政府が再保険として介入している。
保険会社が「引き受けたがらない」リスクは、最も読めないリスクだ。
「10年保証」は何を保証しているのか
太陽光パネルや蓄電池には、メーカーによる「10年保証」が付いていることが多い。この保証書を見て、安心する消費者は多い。
しかし保証書が保証するのは、「保証書に書いてある条件が満たされた時に、何らかの対応をする」という約束だ。その約束を履行する主体――つまり会社――が存在することが前提だ。
太陽光パネルの普及が本格化したのは2012年のFIT導入以降だ。当時参入したメーカーや施工業者の中には、すでに廃業・撤退したところがある。廃業した会社の保証書は、紙切れになる。
保証書の価値は「書類の内容」ではなく「保証を実行できる主体が10年後も存在するかどうか」で決まる。
廃棄問題という「読めない規模」
太陽光パネルのリスクをもうひとつ挙げると、廃棄の問題がある。
FIT制度が始まった2012年から2014年にかけて大量設置されたパネルは、2030年代後半から廃棄期を迎える。推計では数百万台規模。リユース・リサイクル市場の整備が追いついていない中で、適切な廃棄コストが発生する。
この廃棄費用を、導入時の採算計算に含めている家庭はほとんどない。「設置費用・節電効果・売電収入」は計算書に載っているが、「撤去・廃棄費用」はほぼ載っていない。
20年ローンで買った家が15年で建て替えになる話と同じ構造だ。出口コストが見えないと、損益分岐点の計算が大きくずれる。
保険会社がパネルの廃棄リスクに損害保険をつけにくい理由のひとつは、この「規模が読めない」という点にある。
「確率はわかるが規模が読めない」リスクの扱い方
リスクには2種類ある。「発生確率は低いが、起きたときの規模が小さい」リスクと、「発生確率は低いが、起きたときの規模が読めない」リスクだ。
前者は保険でカバーできる。後者はできない。
太陽光・蓄電池のリスクの多くは後者に近い。パネルの火災リスク、廃棄費用の上振れ、FIT後の売電価格の変動――いずれも「確率はある程度見積もれるが、金額規模が読みにくい」性質を持つ。
だからといって太陽光パネルや蓄電池が「悪い選択」というわけではない。蓄電池を「何の目線で買うか」を先に決めるという問いが重要なのは、このリスクの性質を理解した上で判断するためだ。
保険会社が嫌うリスクを、自分でどう抱えるかを決めること。それが「保証書の先にある判断」だ。
保証書を読む前に確認すること
保証書を読む前に、まず確認すべきことがある。
その会社は10年後も存在しているか。本社がある国の法制度は安定しているか。保証の条件(設置方法・メンテナンス義務・免責事項)はどうなっているか。
これらは保証書の「内容」ではなく、保証書の「前提条件」だ。前提が崩れると、内容は意味を持たない。
保険会社が引き受けないリスクは、自分で引き受けることになる。その自覚があれば、判断の質が変わる。