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2026-04-11電力会社選び

2030年に向けて、電力会社の数はまた減る

電力会社新電力電力自由化容量市場GX再エネ

「また倒産するんですか?」

2022年の新電力撤退ラッシュを経験した人から、よく聞かれる。答えは「はい」だ。ただし理由は2022年とは少し異なる。

燃料費の急騰が引き金だった2022年の撤退とは違い、これから来る変化は構造的だ。国のGX政策、容量市場の制度変更、再エネ義務化――これらが中小新電力の「存在できる余地」を狭めていく。生き残れない会社は退場する。

今から5年後、どんな電力会社が残っていて、どんな会社が消えているか。その構造を知っておくことは、今の電力会社選びに直結する。


10年で119社が消えた――歴史は繰り返す

2016年の電力小売完全自由化から始まった市場は、参入の波とともに淘汰の波も来た。

ピーク時には新電力の登録数が700社を超えた。2024年末時点で実態のある新電力は、その半分以下になっている。廃業・撤退・合併の数を積み上げると、消えた会社の数は100社を優に超える。

電力自由化10年の詳細な経緯をたどると、撤退の波は一度ではなく、複数の「波」があった。2019〜2020年頃の中小新電力の整理、2022年の燃料費急騰による撤退ラッシュ、そして今また別の波が静かに近づいている。


次の「淘汰」を引き起こす3つの構造変化

① 容量市場が中小新電力を締め出す

容量市場とは、「将来の発電能力を確保するための市場」だ。2020年度から本格稼働し、電力会社は電力の安定供給能力(容量)を市場で取引する義務を負う。

この制度は、自社発電設備を持たない小規模な新電力にとって重い負担になる。容量確保のコストを調達しなければならないが、大手電力と比べて交渉力がない。コスト増を料金に転嫁すれば「安い新電力」という強みが消える。

容量市場の本格稼働は、「安さだけで戦っていた新電力」のビジネスモデルを静かに壊しにいく。

② 再エネ調達義務化が中小を追い込む

GX(グリーントランスフォーメーション)推進のもと、再エネ電力の調達義務が段階的に強化されつつある。大企業向けには「RE100」や「非化石証書」の需要が高まり、法人顧客は再エネ調達できる電力会社を優先するようになっている。

再エネ電源を自社で持つか、または調達ルートを持つ電力会社でなければ、法人市場で戦えなくなる。法人市場は電力会社にとって収益の柱だ。ここで差をつけられた中小新電力は、個人向けの薄利競争しか残らない。

③ 送配電コスト上昇が利益率を圧迫する

電力会社が消費者に電気を届けるには、大手電力の送配電網を「託送料」として使用料を払う必要がある。この託送料は固定費であり、規模の小さい電力会社ほど1kWhあたりのコスト負担が重い。

さらに、老朽化した送配電インフラの更新コストが今後増加する見込みだ。これが託送料の値上がりとして新電力に転嫁されれば、中小新電力の利益率はさらに圧迫される。


2030年に残る電力会社の条件

これらの構造変化を乗り越えられる電力会社には、共通点がある。

自社発電を持っている 再エネ・LNG・原子力いずれかの発電資産を持ち、容量市場に対応できる会社。電源を持たない「電気の仲介業者」は、制度が厳格化するほど圧迫される。

大手グループの資本力がある 容量確保・再エネ調達・送配電インフラ対応――いずれも資本力の問題だ。親会社が大手エネルギー企業・ガス会社・通信会社であれば、これらを乗り越えるリソースを持つ。

独自の付加価値がある 「安さだけ」の戦略は、制度変化でコストが上がった瞬間に通用しなくなる。太陽光+蓄電池+EV充電とのセット、電力データを活用した省エネ提案、地域特化のサービス――安さ以外の軸を持つ会社が長く残る。


「今の電力会社が10年後も存在するか」の確認方法

電力会社を選ぶとき、通常は「今の料金」を比較する。でも長く使い続けるなら、「10年後も存在するか」も判断基準に入れるべきだ。

確認できることは意外とシンプルだ。

親会社・グループ会社を確認する 「○○電力」「○○エナジー」の多くは、大手電力・ガス・通信会社のグループ会社だ。親会社の規模と財務安定性は公開情報で確認できる。

自社発電の有無を確認する 電力会社のWebサイトや「電源構成」の開示資料を見ると、自社発電の割合がわかる。「再エネ比率○○%」を謳っている場合、自社発電かFIT電力の調達かを区別すること。

価格の根拠を確認する 安い電力会社がなぜ安いのかを理解すると、「持続可能な安さ」と「リスクを取っているだけの安さ」を区別できるようになる。


「今の会社が消えたらどうなるか」を先に知っておく

電力会社が撤退・倒産しても、電気は止まらない。最終保障供給制度により、旧一般電気事業者(地域の大手電力)が供給を引き継ぐ。ただし、引き継ぎ後の料金は通常より高くなることが多い。

「消えたら面倒だからリスクを取りたくない」という判断は合理的だ。ただし、大手電力のままでいることに年間1〜2万円の「継続コスト」が発生しているとすれば、そのトレードオフは意識的に選ぶべきだ。


まとめ

電力自由化から10年で100社以上が消えた。次の10年でも、同じか、それ以上の数の会社が姿を消す可能性がある。理由は燃料費の急騰ではなく、容量市場・再エネ義務化・送配電コスト上昇という構造的な変化だ。

電力会社を選ぶ際に「今安いか」だけを見るのは、「今の利回りだけで投資先を選ぶ」のと同じ発想だ。10年後も存在しているかどうかを見る目を持つだけで、選択の質が変わる。

電力自由化の仕組みと市場の変化について、基礎から確認したい方はこちらも参考にしてほしい。


電力会社を比較する際は、料金だけでなく親会社・電源構成・プランの種類をあわせて確認することをおすすめします。

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