2026-09-24 ・ 法人向け
法人の電気代は、秋に見直すと効く
「電気代が上がったから見直したい」と動き出すのは、たいてい請求書が跳ねた月だ。夏なら8月、冬なら1月か2月。
だがその時期に動き始めると、実際に契約が切り替わるのは、山を越えたあとになる。手続きに時間がかかるからだ。
秋に見直す価値があるのは、単に「涼しくて余裕があるから」ではない。冬のピークが料金に与える影響が、契約の切り替えより先に確定してしまうからだ。
1月の最大値が、その後1年を決めることがある
高圧受電の事業所では、基本料金が契約電力によって決まる。そしてこの契約電力の決まり方は、「実量制」と呼ばれる方式を採る場合がある。
実量制では、直近1年間の各月の最大需要電力——30分単位で計測した使用電力の、その月の最大値——のうち、最も大きい値がその後の契約電力になる。
つまり冬のある日の、ある30分に記録された最大値が、その後12か月の基本料金を決める。あとの11か月をどれだけ節約しても、その値は下がらない。
暖房が一斉に立ち上がる冬の朝は、この最大値が出やすい時間帯だ。始業前の暖房、照明、給湯、厨房設備。これらが同じ時間に立ち上がると、その日だけ数字が跳ねる。
一度跳ねた値は、1年間ついてくる。だから対策は、跳ねてからでは遅い。
秋にやる3つの確認
冬が来る前に確認する価値があるのは、次の3点だ。
1. 過去12か月のデマンド推移
多くの電力会社は、事業所向けにデマンドの実績データを提供している。まずこれを取り出して、いつ最大値が出ているかを見る。
見るのは金額ではなく、記録された最大値とその日時だ。夏の午後なのか、冬の朝なのか。どの時間に出ているかが分かれば、対策の打ちどころが決まる。
もし特定の1日だけが突出しているなら、その日に何があったかを現場に聞く。設備の同時立ち上げや、臨時の稼働が原因なら、運用の工夫で避けられることがある。
2. 契約種別が実態と合っているか
事業の内容が変われば、電気の使い方も変わる。設備を入れ替えた、稼働時間を変えた、テナントが減った——こうした変化があったのに契約はそのまま、という状態はよくある。
特に、使用量が減っているのに契約電力が高いままだと、使っていない容量に基本料金を払い続けることになる。
低圧と高圧の境目にある規模の事業所では、契約の種別そのものを見直す余地がある場合もある。50kWという境目は、事業規模の実態とは別の論理で引かれた線だ。
3. 契約期間と更新の時期
法人向けの電力契約には、契約期間が設定されていることが多い。期間の途中で解約すると精算が発生する場合もあれば、更新の通知期限が決まっている場合もある。
いま何月に更新を迎えるのか、通知はいつまでに出す必要があるのか。ここを把握していないと、比較検討をしたのに手続きが間に合わない、という事態になる。契約書の該当箇所を一度確認しておく。
「誰も見ていない設備」が最大値を作る
デマンドの実績を取り出すと、現場の認識と数字が合わないことがよくある。
節電の意識が高い事業所ほど、照明やパソコンといった目に見えるものは管理されている。一方で、最大値を作っているのは、たいてい誰も見ていない設備の方だ。
冬の朝に多いのは、暖房の立ち上げと、給湯設備と、凍結防止のヒーターが同時に走る組み合わせだ。いずれも自動制御で動くため、人が意識する場面がない。タイマーの設定は導入時のまま何年も触られていないことが多く、いつ動いているかを把握している人が社内にいない、ということも起きる。
これらは、止めれば業務に影響が出る設備でもある。だから「止める」のではなく「ずらす」ことが打ち手になる。同じ電力を使っても、同じ30分に集中しなければ最大値は上がらない。
秋にやっておく価値があるのは、こうした自動で動く設備のタイマー設定を洗い出すことだ。図面や仕様書ではなく、実際に設定されている時刻を確認する。デマンドの実績データと突き合わせると、跳ねている時刻と設備の起動時刻が一致することが多い。
単価の比較より先に、使い方の形を掴む
電力会社を比較するとき、単価の一覧を並べるところから始めたくなる。だが法人の電力では、単価だけを比べても答えが出ないことが多い。
金額を決めているのは、単価と使用量に加えて、契約電力(基本料金)と、月ごとの使い方の偏りだからだ。同じ年間使用量でも、平準化して使う事業所と、特定の時間に集中する事業所では、有利なプランが違う。
だから比較の前に、自社の使い方の形を数字で持っておく。
- 年間の使用量(kWh)
- 各月の最大需要電力(kW)とその発生時刻
- 曜日・時間帯ごとの使用の偏り
この3つがあれば、複数の会社に同じ条件で見積もりを依頼できる。条件を揃えずに見積もりを取ると、比較にならない数字が並ぶ。
デマンドを下げる打ち手は、投資とは限らない
最大値を抑える方法は、設備投資を伴うものだけではない。
立ち上げ時間をずらすのが最も安く効く。冬の朝、暖房・給湯・厨房を同時に入れると最大値が出る。10分か15分ずらすだけで、重なりが解ける場合がある。
デマンド監視の仕組みを入れると、契約電力に近づいたときに警報が出る。閾値に達する前に一部を止められれば、跳ね上がりを回避できる。仕組みの導入費用と、下がる基本料金を比べて判断する。
設備の更新は効果が大きいが、費用も時間もかかる。空調や照明の更新は、消費電力そのものを下げるため、最大値にも総量にも効く。導入時期を検討するなら、支援制度の対象になるかを含めて、早めに情報を集めておく。制度の内容や公募時期は年度ごとに変わるため、その時点の公式情報で確認するのが確実だ。
まとめ:見直しは、山が来る前に終わらせる
冬の最大値は、その後1年の基本料金に効く。だから見直しは、山を越えてからではなく、山が来る前に終えておく。
秋にやるのは3つ。過去12か月のデマンド推移を取り出すこと、契約種別が実態と合っているかを見ること、契約の更新時期を把握すること。この3つが揃えば、比較検討を始める材料になる。
比較そのものは、材料がそろってからでいい。逆に、材料なしで始めた比較は、たいてい途中で止まる。
なお、法人の電力契約には電気代以外の圧力もかかり始めている。法人が再エネを買う理由は、環境ではないで書いたように、取引先から使用電力の再エネ比率を照会される流れが下請へ降りてきている。使用量の実態を把握する作業は、この照会への回答にもそのまま使える。
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